イラク戦争のとき、朝目新聞の社説 「米英軍はバグダッドを流血の都に てはならない。フセイン大統領は国 民を盾にするような考えを持っては らない」と書いた。この文章はまっ く正しい。まったく正しいけれど、 いったい、この文が誰向かって語り けているのか、私にはよく分からな った。

読者に向かって語りかけているのだ うか?どうも、そのようには思えな 。というのは、読者たちは米英軍の 作戦内容に口を挟める立場にないし フセイン大統領の「考え」をコント ールする能力も持たないからだ。( ① )、その「言ってみてもはじまらな 」ことを、この論説委員はくどくど いている。そしてそのことに本人は おそらく違和感を覚えていない。こ 事実のうちに、私は②私たちの時代 言説を蝕んでいるある種の「病」の 徴候を感知するのである。私が「病 というのは、この論説委員が興味を っているのは「正論を述べる」こと であって、「言葉を届かせる」とい ことにあまり興味がないということ ある。
(内田樹「子どもはわかってくれな 」より)

問1 ( ① )にはどの語が入るか。
1 にもかかわらず
2 だからこそ
3 それはさておき
4 だからといって
問2 ②「私たちの時代の言説を蝕んでい ある種の「病」の徴候」とあるが、 のような「病」なのか。
1 自分の言葉に責任を持たないこと
2 読者好みの言葉を濫用すること
3 読者に訴える言葉を考えないこと
4 読者が興味のないことを書くこと。