原日本人の境界認識として、ウチ・ ト認識の外側にヨソという世界があ 。ウチ=自分中心の仲間、ソト=そ の外側の関係ある世界、ヨソ=無関 で無視できる世界、というわけであ 。昔の人はウチのものには親しみの あるくだけた言葉を使い、ソトのも には敬語を使い、ヨソのものとはコ ュニケーションせずに無視した。同 じ電車に乗り合わせた乗客は何も問 が起こらなければ無視できる(  ア  )であるが、話をしたり文句を言っ りするような関係が生じた時点で(  イ  )のものになる。

今の日本人の礼儀語不足は、ウチ・ ト・ヨソ認識に狂いが生じたことが 因と考えられる。ヨソのものがソト のものになっているのに、態度や言 は依然としてヨソ扱いのままなので る。大学の教授が授業中の学生の私 語に業を煮やしているが、今の学生 とって教授は自分と関係のあるソト 人間ではなく、自分と無関係なヨソ の人間なのである。だから、電車の で友人と話すのとまったく同様に、 授業中声を潜めるでなく、友人と会 話ができる。
(浅田秀子「敬語で説く日本の平等 不平等」より)
・業を煮やす(ごうをにやす):異 った文化に接した時に受ける精神的 衝撃。
・声を潜める(こえをひそめる): が広くて、善悪の区別なく受け入れ 。

問1 ア、イに入る語の適当な組み合わせ どれか。
1 ア:ヨソ イ:ウチ
2 ア:ヨソ イ:ソト
3 ア:ソト イ:ウチ
4 ア:ソト イ:ヨソ
問1 ①「授業中声を潜めるでなく、友人 会話ができる。」とあるが、それは ぜか。
1 今の学生にとって、教授は尊敬の対 ではなくなったから。
2 今の学生にとって、教授の話より友 との会話の方が大切だから。
3 今の学生にとって、教授は友達と同 対等な存在と考えているから。
4 今の学生にとって、教授は自分と無 係な存在と考えているから。