わが国ほど豊かな自然に恵まれた国 少ない。(  ①  )、四季の巡 にしたがって、自然は変化に富んだ 装いをみせる。ウサギ小屋とからか れるような小さな家にも庭があり、 屋には花が生けてある。日本人は世 界の数ある民族の中でも、すぐれて 然を愛好する民族だと思っている人 多い。(  ②  )、それは半分 は正しく、半分は間違っている。

 知床半島の原生林の伐採が強行さ て、島フクロウ(鳥の種類)が絶滅 危機にさらされる。残された唯一の ブナ(ブナ科の落葉高木)の大原生 である自神山地の伐採計画が進めら ている。石垣島の自保の珊瑚礁が破 壊されようとしている。すべて経済 先の考えに基づく暴挙であるが、も と根本的には日本人の自然観に基づ いている。

 日本人は自然保護の思想が貧困だ 言われる。なぜそうなのかを少し考 てみたい。
一言にして言えば、(  ③  ) らである。国土面積の森林被覆率は ア]パーセント弱、これは森と湖の 国フィンランドに匹敵する世界有数 森林国と言えよう。木材の国力ナダ あっても森林面積は国土の[イ]パ ーセント、ドイツやフランスで[ウ パーセントだから、日本は大変な森 国である。それに樹木の種類も多い 。フィンランドヘ行ってびっくりす のは、樹種が非常に少ないことだ。

 わが国は世界でも有数の天災多発 だ。地震や火山の噴火で山は崩れ、 火事で山が燃えつきることもある。 しかし、しばらくするとススキ(イ 科の多年草)や笹が生え、次いで低 や松の緑が破壊された地肌を覆って しまう。日本の森は壊れても焼かれ も復元する粘り強さをもっており、 界中でも最も回復力が強い森だと言 ってよい。清い水と豊かな緑に覆わ た自然、どんな災いからも立ち直る 死鳥のような自然、そんな中で育っ た④日本人には、自然を保護しよう どという考えが生まれようもなかっ 。自然は人間を守ることはあっても 、人間に守られる存在ではなかった

 ヨーロッパの森は日本のそれとは い、人間の仕業に対してもろくて弱 。農耕牧畜が始まって以来、ヨーロ ッパの森林は破壊され続け、ほとん なくなってしまった。自然は人間の 立物として考えられ、人間によって 支配されるべき対象であった。自然 壊の極地に至ったとき、自然は管理 保護しなければならないという思想 が生まれる。プロシャで自然保護と う言葉が生まれたのは、わずか200 年前のことである。

 日本人にとっては、自然は人間の 立物でもなく、まして支配する対象 もなかった。空気や水と同じく、人 間を取り巻くごく当たり前のもので った。人間の力ではびくともしない かな自然、それがここ20 年の間に巨大な破壊技術の進歩によ て、急激に壊され始めたのである。 かし、まだ日本人の心の奥には、自 然は無限に豊かで、不落の城である のような印象が根を張っている。⑤ の状況が続けば、かつてのヨーロッ パがそうであったように、否、もっ 恐ろしい形で日本の自然が破壊しつ されるであろう。そうなればもはや 取り返しがつかなくなる。
                
(河合雅雄「子どもと自然」<岩波 店>より)
問1 ( ① )に入る語はどれか
1 しかも        2 す と        3 しかし        4 だから

問2 ( ② )に入る語はどれか
1 では         2 だ ら        3 しかし        4 それで

問3 ( ③ )に入る文はどれか
1 日本の自然が豊かすぎる            2 日本の自然が 壊された
3 日本が有数の天災多発国だ          4 自然と人間は対 物ではなかった

問4 [ア]〜[ウ]に入る数字の み合わせとして、正しいのはどれか
1 ア:33  イ:70  ウ:27               2 ア:27  イ:33  ウ:70
3 ア:27  イ:70  ウ:33               4 ア:70  イ:33  ウ:27

問5 ④「日本人には、自然を保護 ようなどという考えが生まれようも かった」とあるが、なぜ日本人には 自然を保護しようという考えが生ま なかったのか。
1 日本人は自然との共存を大切に 、自然に手を加えることを嫌ったか 。
2 日本の自然は豊かなばかりか、 分の力で回復する力を持っていたか 。
3 日本は天災が多く、人間が自然 守ろうとしてもむだだったから。 
4 日本人にとって、自然は人間の を越えた神のような存在だったから

問6 ⑤「この状況が続けば」とあ が、その説明として最も適当なもの どれか。
1 経済優先の考えに基づいて開発 進めること。
2 自然を人間の対立物と考えて、 壊すること。            
3 人間は自然の一部と考え、あり ままの自然を残そうとすること。
4 自然は無限に豊かで、失われる のではないと考えること。

View more random threads: